第七天国

二次創作とか管理職とかやってる女の日常

未だ餞の言葉を知らず

大阪で一緒のタイミングで着任し、丸3年間一緒にやってきた後輩氏が退職することになった。

 

この春に東京へ帰任したいという希望をずっと出していたのに叶えられなかったこと、自分の望む評価が得られなかったこと(評価は十分に高かったと思うけど、相対評価においてなされる調整に納得がいかなかったらしい)、その他いろいろと彼の想定していたとおりにならなかったことがあり、それならと環境を変える方向へ舵を切ったらしい。切ってからあっという間の転職だった。仕事の早い男は最後まで仕事が早い。

 

3月下旬の金曜日、私が大阪を離れる前に2人で飲むかということになり、2軒目のバーに流れて、なんとなく会話が途切れたときに、「転職活動を始めたので、うまくいったらやめると思います」と言われた。

引き止めたほうがいいよな、と思わなくもなかったけど、以前「素直さんは、絶対に僕のことを否定しないで味方してくれるから何でも話せる」と言われたし、他の人にもそう言っていたらしいのを思うと何も言えなかった。彼なりにいろいろと考えて出した結論であることも知っていたので、「やめることになったら仕方ないと思うが、寂しいとは思うよ」としか言えなかった。

 

その後はしょーもないことばかり喋ったけど、ひとつだけ印象的な話があり、「僕の長所ってどこですか?面接で聞かれて適当に答えたんですけど、よく知ってる人から見てどうかなって。」と聞かれた。酒も入っていたので「難しいなぁ…」と言ってぼんやりしていたら、じっと返事を待っていて、どうやら真面目に聞いてるらしいことがわかったので、そこそこ考えて、「言動が一致しているところ」と答えた。言ったあとで「だから信頼できるんだな」と自分でも納得した。「言われたことなかったけど、そうありたいと思っていたから、聞けてよかった」と言われたし、こちらの方こそ言葉にできてよかった。言動の一致は最近の自分のテーマになっている。

 

その後もう一軒ハシゴして10時間ほど飲んだくれたあとはゆっくり話す機会がなく、転職するとかしないの話は聞く機会がなかった。

私が東京に戻り4月の間は、「忙しいみたいですね」とか「いつも応援してます、会ったときに話聞きます」とか何度か連絡をくれて、まだ新しい環境に馴染めていない身にはありがたかった。そっちこそ今後のことを色々考えているんじゃないのかと思いつつ、どうせ結論が出るまで言わないことも知っていたから何も聞かなかった。

 

結局、5月に入って「辞めます、夏には東京に帰るので、また飲みに行きましょう」という連絡があって彼の決断を知った。そあと会社で会ったときは慌ただしく近況報告をしただけで、お互い「まぁそのうち」と言って、あらたまって見送る言葉もなかった。

 

3年間、狭いコミュニティで、職住も近接している、ある意味逃場のない人間関係の中で一緒にやってきたので、日々相対する中で考えさせられることも多かった。理屈っぽくて、いつでも正論を言うので、「そりゃ皆があなたのように頭がよくて有言実行の人間ならうまくいくよ」と思いながら、そうでない現実にどうやって折り合いをつけてもらうか考えながら一言一句を選びながら話すことが多かった。

 

ある日、仕事だか組織だかの話で「無駄が多い」とか言い出したのをどうしても流せないときがあり、「正論かもしれないけど、もうちょっと年取って色々経験すると、考え方が変わることもあるよ」と返したときに、「その言い方はずるい、今の僕にわかるようにちゃんと説明してください」と言われたことがあった。

それがうまく言えたら苦労しないよ!と反社的に言い返したくなったが、話をしている「今この瞬間」から逃げているのは自分だと反省した。「大人になったらわかる」なんて、自分だって昔は言われたくなかったはずなので、二度と言わないようにしようと思った。

 

今思うと、気を遣いすぎだったのでは、と思うこともあるが、何せ上司を除くと2人で3年間やっていくしかなかったので、向き合わざるを得なかった。向き合いすぎて、言いたいことよりも言われたそうなことを言うほうがラクになっていた気はする。最後の1年ぐらいは「素直さんは僕のこと好きすぎ」と吹聴していたし、周囲からも「素直さんがあいつを甘やかしすぎるから調子に乗っている」と言われていたが、個人的には人間、調子に乗っているぐらいがちょうどいいと思っているので、できればこのままでいてほしいなと思っている。

 

今後も付き合いは続くらしい。ときどき飲みに行ったりするが、いつまでもかわいくて調子に乗っている後輩でいてくれたらいい。

とりあえず「飲むならいつがいいかい?」というLINEを、今週末でも送ってみ?か。